あっけない終焉~ファーストペンギンは大海原へ~

決意表明

2019年のクリスマスイブ。年内に何かを決めたかった。正社員になって最前線で働くことにチャレンジする決意を胸に、当麻さんと朋子さんへ決意表明に向かう。もう引き返せない。

朋子さんは「一緒にがんばろう」と手を差し出してくれた。そして当麻さん。暮れの忙しい時期にもかかわらず、私のために時間を作ってくれた。

「チャレンジすると決めました」朋子さんに伝えたように、ストレートに伝えた。そして朋子さんが喜んでくれたのと同じように当麻さんも、、と思いきや、何も言ってくれない。

「・・・・・・・・・」

いつでもどんな時でも即断即決、即行動の当麻さんの沈黙。自分は何かおかしなことを言ったのだろうか?

まさかの反対

結論から言うと、当麻さんは私の選択には反対というスタンスだった。私は混乱した。そもそもこの提案をしてくれたのは他ならない当麻さん自身。

確かにチャレンジを勧めてくれたわけではない。よく考えてみてと言われただけだ。だけど、てっきり私のチャレンジをよろこんでくれるかと思っていた。

それからいろいろ話して、正社員にチャレンジする話は白紙に戻ることになった。私は予定通り、次の春には会社から去らなければならない。

THE End

この1ヶ月、悩みに悩んだのはいったい何だったんだろう。当麻さんがなぜ自分から提案した道を反対したのか、真意はわからない。

反対しても、それでもやりたいというかどうか、私の気持ちを試していたのかもしれない。

あきらかに無謀なチャレンジ。私が苦しむことをわかっていて、あえていばらの道を歩ませることがいたたまれなかったのかもしれない。

当麻さんの真意がどうであれ、私は当麻さんがよろこんでくれない選択をすることは本意ではなかった。

虚無と満足

私は闘いに負けた。アシスタントとして新しい道を開くという、そもそもが無茶な闘いだった。

やはりアシスタントは会社にとってはただの使い捨ての駒だった。そんなことは最初からわかっていて、賢い人たちは次々と辞めていった。

残っているのは自分のように何かを変えたくて闘っているか、何も考えずただただ時間を過ごしているかのどちらかで、どう過ごしても終わる時は同じように終わる。

私の闘いは無駄だったんだろうか。最後の更新を言い渡されてから、この10ヶ月。いろいろあったけど、不思議と晴れ晴れとした、スッキリした気分。

負け、とは

当麻さんは私のチャレンジに反対はしたけれど、決してビジネスライクに切り捨てたわけではなかった。言いにくいことも優しく伝えてくれた。

そもそもこの一連の私の身の上話に、こんなにも当麻さんが心を砕いてくれるとは思ってもいなかった。

たまたま少し仕事をサポートしているだけの、しがないアシスタント。なぜこんなにも親身になって、優しくしてくれるのか、今でも不思議で仕方がない。

反対した当麻さんも賛成してくれた朋子さんも、私のことを想ってくれていることだけは伝わってきて、胸が苦しくなる。

私は負けたんだろうか。

負け、とは。

とにかく年内に結論は出た。身動き取れない状態が何よりもきつかった。私はやっと、前に進める。

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