日常に戻る
私から誘った二人飲みは実現せず、また普通に日常は始まった。高橋さんからは私が帰宅した後に返信があって、連絡の行き違いで飲みは実現しなかったという形で落ち着いた。
返信が遅くなったことについてなのか、飲みに行けなかったことについてなのか、高橋さんからはメールと対面で二回ほど謝られ、更に落ち込んだ。
私は社交辞令的にまたお時間ができれば行きましょう、と伝えて今回の事は自分の中でケースクローズした。高橋さんを困らせて気を遣わせてしまったことに、ただただ自己嫌悪していた。
会えない
それからまたいつも通りの仕事が始まって、出張続きの彼とはほとんど顔を合わせる機会もなく時間が過ぎて行った。
ほとんど話す機会もなくそのまま夏の長期休暇に突入するという頃、出張先から仕事絡みのメールが来て何度かやり取りをした。
私は休暇直前、仕事を口実に高橋さんに電話をかけた。メールで済む話ではあったけれど、1週間近くも高橋さんと話していない。単純に声が聞きたかった。
出張先で落ち着いているだろう時間を見計らって電話をかける。高橋さんに自分から電話をかけるのは初めてのことだ。緊張する。
そもそも電話自体、ほとんどすることがなくなって苦手意識がある。それに高橋さんは独特のペースで、対面で話すのもテンポが難しい人。電話で難なく話せるだろうか。
緊張の通話
想定通り仕事も落ち着いた時間だったのか、しばらく話していなかったせいか、わりと話が弾んで楽しかった。彼は電話が好きな人だから、今後は電話の方がいいのかもしれないと思った。
高橋さんが前回の延期になった飲み会の話題を出してくる。私はもうケースクローズしていたのでその話はしたくなかったけれど、残念でしたねと適当にスルーする。
すると高橋さんが、「飲み会はしばらく延期みたいだし、今度ランチでも行こうか?いつも仕事でお世話になっているし。何が食べたい?」と言ってきた。
突然のお誘い
なんと!これは個人的なランチのお誘いじゃないか!!私はテンパった。高橋さんはだいたいふわっとしていて、こんなにも直接的にお誘いしてくれるのはかなり珍しいことだ。
長期休暇直前だったので、行くとしたら早くても休暇明け。2週間も先のランチに何が食べたいかなんてまったくわからない。
しかしここでふわっとして終わったら、ランチの話自体がまたふわっとしてしまうことを私は学習している。
私はとっさに「○○に行きたいです!」とハッキリ伝えた。以前、何人かでランチをした時に、高橋さんが連れて行ってくれたお店だ。
楽しみの向こう側
私があまりにも勢い込んで言ったせいなのか、高橋さんは「わかったわかった」と笑ってOKしてくれる。
「休み明けに行こうね」と言ってくれて「楽しみにしています」と伝える。電話を切って、心の中でヤッター!!と叫ぶ。電話してよかった。
休暇明けが楽しみ。楽しみな気持ちでさみしい休暇を乗りきれる。
休暇は写真撮りに出掛けるの?と私の趣味を覚えていてくれて聞いてくれる。いつも通り海方面に出掛ける予定を組んでいた私。
高橋さんに感動してもらえるような素敵な写真をきっと撮ろう。好きな気持ちを口には出せないけれど、写真に気持ちを込めよう。きっと、高橋さんに喜んでもらえる写真を撮る。