再会、、するのか!?
「ヘルメット捨ててないよね?」
別れてからもときどきメッセージのやり取りをしていた、外コンでワーカーホリックの元彼から連絡が入る。別れてから約半年、久しぶりに会うことになった時のこと。
彼に買ってもらったヘルメットは捨てていなかった。使うことはないとは思っていた。だけど、そのヘルメットを買ってもらったときの幸せな気持ちがまだまだリアルに残っていて、手放す発想はなかった。
そのヘルメットを買ってもらって、数日後に初めて彼のハーレーに乗せてもらった日は、今から思っても本当に楽しくて幸せな時間だった。ヘルメットを見ると、その時のことを思い出す。大切な思い出。
半年間のこと
会わない間もときどき連絡を取り合っていた。再会することがあるのか、ないのか、ふわふわしたまま時間が流れていた。
私はあれこれチャレンジしている時期でもあって、思い付いたときに気楽にメッセージできる関係が心地好かった。
昨年の年末ごろにメッセージのやり取りをしたときに、つき合っていたときには使うことのなかった絵文字やスタンプが送られてきて、若い彼女でもできたのかなと思っていた。
それでも年明けお正月に連絡があって、それもまた海外からだった。それから何度か連絡があったけれど、昨年とは違って仕事の愚痴のような悩みのような、疲れている様子の連絡が増えた。
長いような短いような
平日のど真ん中。夜遅くに彼と会うことになった。「ヘルメット捨ててないよね?」と聞かれて、「うん、持ってるよ」と答える。
私の家のすぐそばの公園の、桜の木の下で彼を待つ。つき合っていたときはいつもこの桜の木の下で、どきどきしながら彼を待っていた。その時間が最高に幸せだった。
ふぉんふぉんと、遠くからエンジンの音が聞こえる。初めて聴いたときと変わらない、意外にもやさしい音。半年ぶりに顔を合わせた。半年が長いのか短いのかわからない。いつもの彼がそこにいた。
不思議な縁
彼を見て久しぶりに心が軽くなった。彼に会いたかったんだなと、その時に気が付いた。会えてうれしかった。
つき合っていた頃と同じように「どこに行きたい?」と聞いてくれる。私はいつも「海方面に行きたい」と言っていたけれど、その日、彼は私の返事を待たずに「海方面に行こうか」と言ってきた。
そして少し走って、水辺のカフェでゆっくり話をした。メッセージのやり取りをする時はだいたい彼発信で私は聞き役に回るのに、会うと彼は聞き役に回る。
この半年でコミュニケーション能力を磨いてきたつもりで他の人にはうまくいっているのに、彼に対しては何も発揮できず、あまりうまく話を聞いてあげられなかった。
それでも帰宅すると0時を過ぎていて、あっという間に楽しい時間は過ぎていた。別れ際に、「会えてうれしかったよ」と伝えた。
そして彼はまた海外出張へ出かけて行った。「ヘルメット捨てないでね」と言葉を残して。