非日常
なんとも言えないふわふわした気持ちで迎えた飲み会当日。いつもと同じように朝の勉強をして、ぼちぼち仕事をする。早めに仕事を終えて職場近くのカフェで高橋さんを待つ。
間もなく時間が来て高橋さんと合流する。社外で会うのはとてつもなく非日常で、とてつもなく緊張する。
お店に向かう道すがら、高橋さんは無口だった。仕事で疲れているのか、この状況に困っているのか、もしくは自分と同じで緊張しているのか?
ぽつりぽつりと話しながらお店に着く。高橋さんが予約してくれていたお店は、一軒家で一階は十数席のカウンターがあるだけの、カジュアルなワインバーだった。
幸せな時間
ビールとワインとおいしい食事。隣には居心地のいい人。この年の瀬にこんなに楽しい時間を持つことができた。今年いろいろがんばって良かったなとしみじみ思っていた。
高橋さんはごくごく紳士的でそれでいて親しみやすく、私の相談事にも真剣に耳を傾けてくれた。
19時にお店に着いて、閉店の23時過ぎまでひたすら飲みながらしゃべっていた。仕事のこと、勉強のこと、学生時代のこと、趣味のこと、悩みごとから海外ドラマの話まで、尽きることなく延々としゃべる。
高橋さんの家庭の話は一切しなかった。私も聞かなかったし高橋さんも話さなかった。
名残惜しい
閉店時間になって強制的に外に出される。もっともっと話したかったけれど、話したりないくらいがちょうど良かったのかもしれない。
お会計は高橋さんがこっそり済ませてくれていた。もちろん支払いを申し出たけれど、大丈夫だよと言ってくれたので甘えてしまった。
外に出ると、雪が降りそうなくらい寒い。街のイルミネーションがいつもよりキラキラして見える。駅まで身を寄せ合いながら歩く。
違う路線なのに、わざわざ駅のホームまで送ってくれて、私を電車に乗せて見送ってくれる。翌日また職場で会うのに、長い間会えないみたいに何度も何度も手を振る。また行こうねと言ってくれる。うれしかった。
気持ちの変化
高橋さんのことを男性として意識したのはこの1ヶ月ほど。こうして飲みに行けるような距離になれて本当にうれしい。
今回の二人飲みで、職場では話せないことをたくさん話した。高橋さんの話をたくさん聞けたし、自分のこともたくさん話せた。
高橋さんも楽しんでくれていたように見えた。彼が独身なら、次は休みの日にデートだなと思えるくらい盛り上がったように思う。
だけど彼には大切な人がいる。変えられない事実。現実。だけど私はそれがつらいとか苦しいとかそんな風には思わない。むしろ今回この楽しい時間を過ごせて、すごく気が楽になった気がする。
これから
高橋さんは思っていた通りの、、思っていた以上の人で、自分にとって信頼できる人っていうのを確認できたのかもしれない。
来年以降も彼とは職場で毎日顔を合わせるし、仕事を一緒にする機会も増える。日常生活で長く深く関わる人だ。奥様よりも過ごす時間は長いかもしれない。
男性として想いを寄せても仕方のない人だ。せめて仕事で信頼してもらえるような存在になりたいし、女性としても魅力的な存在になりたい。
今の私がそうであるように、私と会えることで毎日会社に行くのが楽しいと思ってもらえるような、毎日会いたいと思ってもらえるような、そんな存在になれたらいいなと思う。