無性に海に行きたかった。
いつも眺めてめそめそしていた
あの海に行きたくて。
以前に行ったときよりも
また違って見えるような気がしていた。
海と向き合うってことは
自分と向き合うってことだ。
自分が少しは成長できてるかどうか
知りたかった。
だけどGWも過ぎて本格的に
サーフィンのシーズンも始まる頃。
いつも行ってた彼の地元の海も
冬は穏やかでも
夏は波が立って
人もサーファーも多い。
彼や彼の仲間と顔を合わせてしまう
可能性も高い。
彼に迷惑はかけたくなかった。
冬の間もビーチを確認するまでは
目立たないようにしていた。
そもそも波がある時は
行くのをやめていた。
天気図は読めないから
天気予報の波の高さ情報しか無くて
心許なかったけれど。
身体中に貼るカイロを貼って
厚着で更にストールを身体に巻いて
フラットかたまに膝くらいしかない
海を眺めていた。
初心者サーファーさんが一人だけ
ポツンと
一生懸命、何度も何度も
波を捕まえようとしている。
太陽がどんどん沈んでいって
海面の反射具合が常に変化して
胸が締めつけられるほど
美しい景色だった。
彼の居場所がこんなに素敵なところで
心の底から羨ましかった。
初心者サーファーさんが
波に乗っている。
地球上で一番綺麗な場所にいると思った。