彼の愛した海1

冬はあまり波が立たない場所らしく

一緒にいる間、彼がホームとしている海には
行く機会がなかった。

夏になったら一緒に行けると思って
楽しみにしていた。

彼のルーツ。

彼が育った海。

辛いこと楽しいこと
たくさんの想いがつまった

彼のふるさとの海。

行ったことはなかったけど
彼からたくさん話を聞いていた。

彼と離れてすぐ、一人で行った。

片道3時間はかかるけど

幸いにも普通電車で行けて
駅からも歩いて行ける海だった。

彼に会えなくて辛くて

だけどその海にいると
彼と一緒にいるような心地よさ。

初めて見たその海は波ひとつなく
とっても穏やかで私を包み込んでくれた。

渚がきらきら光るその海に
吸い込まれそうになって

このまま自然に吸い込まれて
消えてしまえればいいのにと思った。

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